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今日の法話2015/07/21

『私を支える大地』

   今年もお盆法座で初盆をお迎えになる故人の法名を読み上げて、法要を勤めさせていただきました。
愛する人との別れ(死別)は、そのことによって、相手がどれだけありがたい存在であったかを知り、感謝することができる貴重な時でもあります。
病気になるということは、そのことによって、健康であることがどれだけありがたいことであったかを知る貴重な時でもあります。
その深い悲しみも、やがてはやさしい思い出に変わるときが必ずやってきます。
人は人生で悲しい出来事に出会います。
その悲しみを乗りこえる手助けをするのが宗教の役目です。
私たちは、仏教、中でも浄土真宗の教えを通して、悲しみを優しい思い出に変えることが出来ます。
『優しい』という字は、「人が憂いて優しくなる」との意味もあるし、「憂いている人のそばに人が寄り添う」とも解釈できます。
本当に優しい人とは、悲しみや苦しみを経験した人なのかもしれません。

 
深い悲しみ 苦しみを通してのみ 見えてくる世界がある
                                                   平野恵子『子どもたちよ、ありがとう』
 
   平野恵子さんは、岐阜県高山市にある真宗大谷派のお寺の坊守(住職の妻)であり、3人の子どもたちの母親でした。39歳であった年の暮、新年を迎える準備をしていた時、下腹部の激痛に襲われ、大量に下血し、肝臓がんであることがわかりました。それから、二年間の闘病生活の後、平成元年、41歳の若さでご往生されました。子供たちに恵子さんから贈られた手紙や詩がまとめられ一冊の本となりました。


人生には、無駄なことは、何ひとつありません。お母さんの病気も、死も、あなた達にとって、何一つ無駄なこと、損なこととはならないはずです。大きな悲しみ、苦しみの中には、必ずそれと同じくらいのいや、それ以上に大きな喜びと幸福が、隠されているものなのです。子どもたちよ、どうかそのことを忘れないでください。
たとえ、その時は、抱えきれないほどの悲しみであっても、いつか、それが人生の喜びに変わる時が、きっと訪れます。深い悲しみ、苦しみを通してのみ、見えてくる世界があることを忘れないでください。そして、悲しむ自分を、苦しむ自分を、そっくりそのまま支えていてくださる大地のあることに気付いて下さい。それがお母さんの心からの願いなのですから。 
                                   
                                                   
‥‥‥ (『子どもたちよ、ありがとう』より)

 その「贈り物」は、子どもたちに、「深い悲しみ、苦しみを通してのみ、見えてくる世界があること」を教えています。
 深い悲しみに出会う時も、私のいのちをそのまま支えてくださる弥陀の大地があることに感謝しお念仏いたしましよう。