新しい年を迎え、今年もご門徒の皆さまとお念仏申すことができますことを、心より有難く感謝申し上げます。
年の初めにあたり、浄土真宗の教えに照らし、信心の大切さについてお話しさせていただきたいと思います。
蓮如上人は『御文章』の中で次のようにおっしゃいました。
「それ、当流親鸞聖人のすすめましますところの一義のこころといふは、まづ他力の信心をもつて肝要とせられたり。」
(二帖目十通)
この「肝要」とは、物事の最も大切な部分、中心となるものという意味です。浄土真宗の真髄は、阿弥陀さまのお慈悲を信じ、お任せする「信心」にあるという教えです。
この「信心」とは、自力ではどうにもならない私たちの苦しみや迷いを、阿弥陀さまのお慈悲にすべてお任せする心です。
信心を得たとき、私たちは、どんな状況にあっても阿弥陀さまに支えられ、共に歩んでいただけるという安心の中に生きていくことができます。
先日、こんな出来事がありました。
お寺では、掲示板に毎月何度か書き換え、短い言葉を掲示しています。それを通りがかった学生さんや散歩中の方が足を止めて読んでくださる様子をよく見かけます。
ある日、一人の女性が、お寺を訪ねてこられました。その方はこう言われました。
「いつも掲示板の言葉を見て励まされていました。ありがたいく、心が救われる思いがしています。メモを取るようにしているのですが、しばらく入院していたので、その言葉を拝見することが出来ませんでした。その間の言葉をまとめて教えていただけないでしょうか。」
しばらくお待ちいただき、過去の言葉をA4用紙に手書きでまとめてお渡ししました。その女性はそれを手にして、目頭を押さえながら、
「本当にありがとうございます。これからも、この言葉を励みにしたいと思います。」
と深く喜んでくださいました。
蓮如上人の教えの通り、「信心」という肝要を通して阿弥陀さまの大きなお慈悲をいただくとき、私たちは自分一人で苦しみを抱えるのではなく、仏さまにお任せする道が開かれていきます。その中で、掲示板の言葉も、仏さまの声となって、必要な人々に届いているのだと思いました。
新しい年を迎え、阿弥陀さまのお慈悲をいただきつつ、どんな苦しみや迷いの中にあっても、「南無阿弥陀仏」とお念仏申してまいりましょう。 南無阿弥陀仏